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[翻訳部コラム]熱交換器は何をするものか?#2

[翻訳部コラム]は、普段は特許翻訳を担当する翻訳者・翻訳チェッカーが、業務を通じた考察をもとに執筆いたします。

熱交換器は何をするものか?

-主体が「現象の起こる場所」であるケースにおける翻訳の諸問題をめぐって-

2. 名は体をあらわすかー熱交換器という装置

ある対象が何者であり、何を行うものなのか。辞典や辞書の類にあたり、いくら調べても正面からは答えが得られない。そういうことがあります。わたしたちの実務と身近なところで、その一つの例だと筆者が思うのは、熱交換器と呼ばれる技術要素についてです。熱交換器は、当所の特許部門のお仕事ではなじみ深いものですが、イメージのわかない人も多いかもしれません。用途も設計も様々ですが、私たちの日常生活にもっとも身近なものはエアコンや冷蔵庫に搭載されているそれでしょう。基本的に流体同士の熱の交換がその役割ですが、冷蔵庫の場合、はじめ外気と同じ温度であった庫内空気が熱交換器で「冷媒」という別途温度を下げられた流体に出会い、空気の温熱エネルギーは冷媒に移動します。そうして冷やされた空気は庫内に、冷媒は熱交換器を出て冷媒回路へと戻っていきます。内部の流路を通る流体と、その流路と接する別の流体が熱交換を行う場所が熱交換器です。たとえばWikipediaにあたると、熱交換器は、『熱交換器(ねつこうかんき)は、保有する熱エネルギーの異なる2つの流体間で熱エネルギーを交換するために使用する機器』とあります。専門的な技術書である”Refrigeration and air conditioning Technology ”(注1)には、

“Most heat exchangers are simple and straightforward. The heat exchanger has no electrical circuit or wires. It can be recognized by the fact that the suction line and the liquid line are piped to the same device.(多くの場合、熱交換器の構成は単純で理解しやすい。熱交換器は電気回路も電線も備えてはいない。吸入側のラインと液側のラインとが同一の装置に配管されている事実があるなら、そのことで装置は熱交換器として認識されうるのである。)”

との記載があるのです(p.626)。しかし、ではこの熱交換器「が」、「何に対し」、「何を行う」ものなのか。この点は、いずれの説明に照らしても、どうもはっきりしません。

(注1)Whitman, W. C., Johnson, W. M., Tomczyk, J. A., & Silberstein, E. (2016). Refrigeration and Air Conditioning Technology (8th ed., p. 626). Delmar Pub.

 

1.はじめに 日英翻訳―何が何に対して何をする?
>3.名称は機能をあらわすことがある

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