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2024/08/30
知財トピックス[翻訳部コラム]熱交換器は何をするものか?#1
[翻訳部コラム]は、普段は特許翻訳を担当する翻訳者・翻訳チェッカーが、業務を通じた考察をもとに執筆いたします。
熱交換器は何をするものか?
-主体が「現象の起こる場所」であるケースにおける翻訳の諸問題をめぐって-
1. はじめに 日英翻訳―何が何に対して何をする?
文書を日本語から英語に翻訳していると、「何が、何に対して何を行うのか」、ということの理解と表現に頭を悩ませることがあります。よく言われる通り、日本語はもともと主語を明らかにしない傾向のある言語で、この点は日英翻訳ではよく話題になります。川端康成の小説『雪国』の冒頭部分
『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』
を日本文学者・翻訳家であるエドワード・サイデンステッカーが
“The train came out of the long tunnel into the snow country.”
と訳した例は有名ですが、日本語は明らかに車両内の乗客視点の経験を記述しているけれど、英語ならば「トンネルを抜ける」の主語である「列車the train」を訳出したい事情があるというわけです。こうしたことは何も文学表現特有のことではなく、特許明細書のような技術的・法律的文書の翻訳であってもしばしば出会う事態であり、実務上は処理方法の約束が定まっていることもあります。しかし、上の例で言えば、「川端がトンネルを抜けたと書いたとき、頭にあったのは列車の車両だろうか、話者であったろうか、それともその両者の中間の何かであったろうか?」のような哲学的な問いについては、実務の最中は、たとえ類似した問題に出会っても、深く考える時間がないことが多いものです。
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