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[翻訳部コラム]熱交換器は何をするものか?#1

[翻訳部コラム]は、普段は特許翻訳を担当する翻訳者・翻訳チェッカーが、業務を通じた考察をもとに執筆いたします。

熱交換器は何をするものか?

-主体が「現象の起こる場所」であるケースにおける翻訳の諸問題をめぐって-

1. はじめに 日英翻訳―何が何に対して何をする?

文書を日本語から英語に翻訳していると、「何が、何に対して何を行うのか」、ということの理解と表現に頭を悩ませることがあります。よく言われる通り、日本語はもともと主語を明らかにしない傾向のある言語で、この点は日英翻訳ではよく話題になります。川端康成の小説『雪国』の冒頭部分

『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』

を日本文学者・翻訳家であるエドワード・サイデンステッカーが

The train came out of the long tunnel into the snow country.”

と訳した例は有名ですが、日本語は明らかに車両内の乗客視点の経験を記述しているけれど、英語ならば「トンネルを抜ける」の主語である「列車the train」を訳出したい事情があるというわけです。こうしたことは何も文学表現特有のことではなく、特許明細書のような技術的・法律的文書の翻訳であってもしばしば出会う事態であり、実務上は処理方法の約束が定まっていることもあります。しかし、上の例で言えば、「川端がトンネルを抜けたと書いたとき、頭にあったのは列車の車両だろうか、話者であったろうか、それともその両者の中間の何かであったろうか?」のような哲学的な問いについては、実務の最中は、たとえ類似した問題に出会っても、深く考える時間がないことが多いものです。

 

目次
2.名は体をあらわすかー熱交換器という装置

[翻訳部コラム]熱交換器は何をするものか?-目次-

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